ムーンストーン・マスクにて

 街の一角にある娯楽施設『ムーンストーン・マスク』。
 ここには男女を問わず、ひとときの安らぎと憩いを求める人々が集まっている。不治の病が蔓延するこのご時世に不謹慎といえなくもないが、逆にこういう状況だからこそムーンストーン・マスクのような店が求められているのかもしれない。
 今日も店内は常連客達で賑わっている。
 ここならば情報も集まるだろうし、仕事も見つかるかもしれない。

 数人の常連客から話を聞いたところ、少々興味深い情報を聞き出すことに成功した。
 それはこの店の主人、オファラ・チェルダース・トルンに関するもの。
 話によると、どうやらオファラは盗みに手を出しているらしい。ただし、自らの手は汚さず、腕のいい泥棒を雇っているそうだ。

 あの店の中央で客に愛想を振りまいている女性がおそらくオファラだろう。
 さっそく声を掛けてみる。

「ムーンストーン・マスクへようこそ。私は主人のオファラです。心ばかりのおもてなしをお楽しみください」

 オファラとすこし会話した後に本題を切り出してみる。

「話は聞いた。なにか手伝えることはないか?」
「ふふふ、なんのことかしら?」

 始めはなかなか信用してくれなかったオファラだったが、なんとか口説き落とすことに成功。

「そうね、私個人のことだけど、あなたは役に立つかも・・・」

 よし!と心の中でガッツポーズ。しかし、顔には出さない。
 彼女から詳しい話を聞く。

 彼女から依頼された盗みの対象は3点。

 まずひとつめは「女性の小さな像」。
 ドックス地区に居を構えるアンドロッド・ゴールデン卿の屋敷にあるらしい。

 二つ目は「レジナルド・ラムボトム三世の肖像画」。
 これは肖像画の主であるラムボトム三世の甥にあたるソムズ・ラムボトム卿が所有している。
 なお、ラムボトム卿の邸宅はブラック・レイク地区にあるとのこと。

 最後は「盗まれた壷」。
 この壷を盗んだホッジという男はブラックレイク地区の貴族宅に隠れ住んでいるという噂だ。

 盗みに手を出すのはどうかとも思ったが、軍資金も心もとないし、背に腹は替えられない。それに繁盛しているこの店の主人からの裏の依頼だけあって報酬はかなり期待出来るだろう。
 ふふふ、腕がなるぜ。

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