プロローグ

 私は今ネヴァーウインターの街にいる。
 この街は現在「死悶の疫」と呼ばれる原因不明の疫病に侵されており、その犠牲者はゆうに千を越える。また、この疫病が外部に広がらないようにと、ネヴァーウインターを治めるロード・ナッシャーの命によって全ての門が閉鎖され、街は完全に外界から隔離されている。無論、病魔に侵されていない人ごとだ。
 この疫病の原因を突き止め、治療法を見つけない限り、私を含め、この街に閉じ込められた人々に残されているものは『死』のみ。

 ロード・ナッシャーの腹心であり、ティール神の敬虔な信者でもあるパラディン、レディー・アリベス・ド・ティルマランドは死悶の疫の治療法を遂に探し出した。それはある生物達の一部を材料として薬を調合するというもの。
 「コカトリス」「インテレクト・ディヴァウラー」「ユアン-ティ」「ドライアド」。
 これら4体の生物はウォーターディープで確保され、すでにこの街のアカデミーへと運び込まれていたのだが、先日発生したアカデミー襲撃事件の際に逃げ出したまま行方をくらましている。

 私はそのアカデミー襲撃事件での数少ない生き残り。
 私を見い出しアカデミーへと入れてくれたレディー・アリベスのため、そしてこの閉ざされた街から抜け出し外界へと旅立つためにも、この4体の生物を見つけ出し、治療薬を作る手助けをしなくてはいけない。

「それでは頼みましたよ」

 ティール神の神殿、ホール・オブ・ジャスティスでレディー・アリベスから正式な依頼を受けた私は、この事件の調査に乗り出すのであった。

レディー・アリベスからの依頼

 レディー・アリベスから受けた依頼は2つ。
 ひとつは逃げ出したウォーターディープの生物 4体を全て発見し、連れ帰ること。もう一つはアカデミー襲撃犯の特定及びその証拠となるべきものを探し出すこと。
 アカデミー襲撃犯に関しては全く手掛かりがないが、逃げ出した生物のうちの1体は街のペニンシュラ地区で目撃されたという有力な情報が入っている。

酒場での仲間探し

 レディー・アリベスの勧めもあり、この事件を調査するための仲間探しから始めることにした。
 街にはトレード・オブ・ブレーズという傭兵達があつまる酒場があり、まずはここを訪ねてみる。

 酒場には数人の傭兵達がいたが、彼らの口から出た言葉は、

「ダークエルフは雇ったことねぇなぁ」
「あっちいけ。お前らが疫病を撒き散らしてるんだろ?」

 などというものばかり。

(お望みどおり、貴様らに死を振舞ってやろうか? あぁん?)という気にもなるが、こちらはまだ駆け出しの冒険者。ここはグッと我慢。
 おっと、紹介が遅れましたが、わたくしダークエルフ族の戦士 Mayonと申します。以後お見知りおきを。

 辛らつな言葉を投げかけられながらも仲間を探し続けた結果、5人の冒険者がいっしょに行動してもよいと申し出てくれた。先に神殿で出会ったあの軽薄なローグを含めれば6人か。

  • 誇り高きウスガルド族のバーバリアン『デイラン・レッドタイガー』
  • サイレイント・ロードを崇拝する長き死の僧院のモンク『グリムノー』
  • ドジでおっちょこちょいなエルフのクレリック『リヌ・ラネラル』
  • 富と名声を求める人間のバード『シャルウィン』
  • ノームのソーサラーであり探検家『ボディノック・グリンクル』
  • ハーフリングのローグ『トミ・”グリン”・アンダーギャロウズ』

 この6人のうちからパートナーを一人だけ選べるのだが、はてさて、誰を選べば良いのやら。
 私はファイターなので普通に考えればクレリックのリヌと相性が良さそうなのだが、残念ながらエルフとダークエルフが共に行動するなどということは考えられない。よほど切羽詰った状況になれば別だが。
 悩んだ結果、ここはバードソングと解錠に期待してシャルウィンと行動を共にすることにした。他の冒険者達にも時と場合に応じて助けを求めるかもしれない。

 シャルウィンと挨拶を交わし、彼女から契約の証として「シャルウィンの契約書」を受け取る。

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