緊急クエスト:沈黙、狡猾、暗殺者の調べ(★4)

 緊急 − 沈黙 − 狡猾 − 暗殺者! *ハンターは灰になりました*

 なんとも不吉を連想させるクエストタイトルだ。

 敵は”影蜘蛛”ネルスキュア。巨大な蜘蛛のモンスターで、大きなアゴ鋏の持ち主と聞いている。火山から流れ出る溶岩をせき止めている張本人らしいが、どうやって溶岩をせき止めているのか、そもそも何故せき止めているのか、それを知るものは誰もいない。

 ハンターノートによるとネルスキュアは多種多様な状態異常を用いるらしい。正直嫌な予感しかしないが、ここで怖気づいていては先へ進めない。
 なにはともあれ一度挑戦してみるかと地底洞窟へ向かった。

 探知スキルのおかげだろうか、洞窟内に入った時点で奴の居場所はすぐに判明した。
 地底洞窟の一番奥、クモの巣が張り巡らされたエリアでネルスキュアを発見する。

 それにしてもでかい、でかすぎる。こんなの蜘蛛嫌いなハンターが見たら遭遇・即卒倒してしまうことだろう。ネルスキュアの不意打ちを受けた私は、蜘蛛糸でぐるぐる巻きにされた状態で、そんなことをぼんやりと考えていた。
 この時は正直、死を覚悟したものだが、ネルスキュアの中の少数派因子が反乱を起こしたのか、やつの攻撃はわずかに逸れ、間一髪脱出することができた。
 さて、ここからは私の時間だ!

 私の時間は早々と終わりを告げ、それと入れ替わように奴の空腹を満たす時間が訪れた。

 奴を前方から攻撃しようとすると、口に備えた大あごで容赦なく刈り取られ、挙句の果てには毒に侵される。それならばと奴の腹の下に潜り込むと、尻から生えた針(?)に突き刺され、やがて眠りに落ちる。どうしたものかと少し離れた場所で悩んでいると、蜘蛛糸を射出され、身動が取れなくなったところに突進される。厄介きわまりない。
 蜘蛛糸や睡眠攻撃はオトモアイルーが近くにいると助けてくれるのでなんとかなるが、どうにもならないのが毒だ。攻撃のダメージと毒のダメージでみるみる減っていく体力。薬を飲もうにも奴が邪魔をして思うように飲めない。
 それでも、なんとかかんとか奴がふらつくところまでは追い込んだものの、こちらの方が先に3回倒されてクエスト失敗となった。
 強い、強すぎる・・・。

 ネルスキュアの毒だけでもなんとかならないものか。
 そう考えた私は加工担当と相談し、新たな防具を作成することにした。
 『ゲリョスシリーズ』
 そう、ゲリョスの素材をベースに作られる防具だ。毒耐性上昇効果をもつこの防具を揃え、毒を受ける確率を少しでも減らしたい。

 ゲリョスを狩って素材を集める。ゲリョス1体倒すのに30分近くかかるのが辛い。

 今回製作したのは、ゲリョスヘルム、ゲリョスメイル、ゲリョスフォールド。スキルポイントで毒+10となった結果、スキルに『毒無効』が追加された。
 って、毒無効!? マジですか?? よくて毒半減だと思っていた。こいつはラッキーだ。

 ついでに睡眠対策として元気ドリンコを数点用意した後、再び地底洞窟へ向かった。

 ネルスキュアとの仕切り直しの一戦。

 ゲリョス装備のおかげで毒を受けることがなくなったとはいえ、奴が強いことには変わりがない。それでも解毒のことを考えずに済むようになった分、他のことに注力できるのは大きい。
 できるだけ奴の正面には回らず、側面か背後からの攻撃を心がけながら戦い続ける。

 ここでひとつ気がついたが、奴はすぐに逃げる。一度逃げ出すと、それ以降はちょっと戦っては逃げるを繰り返す。しかもネルスキュアは天井に射出した糸をターザンロープの代わりにして大きく移動する。これを追いかけるのがまた一苦労。シビレ罠や落とし穴を用いて動きを止め、そこで一気に倒せれば良いのだが、なかなか倒しきれないんだよね、これが。
 奴がひっくり返ったところや蜘蛛の巣の下から飛び出してくるところを狙ってタル爆弾を仕掛けるも、奴を仕留めることはできない。逆に不意の連続攻撃を喰らってこちらが倒される始末。
 ネルスキュアの無尽蔵とも思える体力に、もはや畏れよりも嫌気を感じる。はっきり言おう、しつこいと。

 だが、ついに奴が倒れる時が来た。
 戦闘開始から40分後、最初の挑戦からゲリョスの素材集めまで含めれば約1時間50分後。あちらこちらへと逃げまくる奴を追いかけまわり、幻影と戦っているのかと思うほど空振りを連発したが、ようやく、ようやく奴を倒す事ができた。

 重たい体を引きずってなんとか村に帰還すると、村では早くも船の建造が始まっていた。
 だが、私にはそれを見学する体力も、コントローラーを動かす握力も残っていない。
 つかれた。今日はこのまま眠りに就こう。

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