クエスト:無双の狩人(★5)
この世界において、ハンター経験のない人々にも名を知られている大型モンスターが3体いる。
火竜リオレウス、怪鳥イャンクック、そして雷獣ジンオウガ。
今回はそのうちの一体、無双の狩人と呼ばれているジンオウガの討伐クエストを決行する。
天空山の一画、雷鳴が轟くエリアにジンオウガはいた。頭部に生えた角に黄色いたてがみ。青い鱗を身に纏い、四本足で大地をかけるその姿は、伝説上の生き物である麒麟を彷彿させる。
しかしなんだ。ついに私もジンオウガと戦えるところまで辿り着いたのか。ここに到達する前に挫折してハンター業を廃業している可能性が高かっただけに感慨もひとしおだ。
今回は胸を貸してもらうつもりでジンオウガに挑ませてもらおう。
戦闘を開始すると、ジンオウガの動きがどうにも鈍い。もっと俊敏に動きまわるイメージを持っていたのだが、ノソノソしていてやる気を感じられない。たまに立ち止まっては背中から何かをチュインチュインと取り込んでいる。
狩る側にしてみれば楽で良いのだが、ジンオウガというのはこの程度なのだろうか。
そんなわけない。ジンオウガの実力がこの程度のわけがない。
背中からたびたび何かを取り込んでいたジンオウガだが、突如として放電を始めた。そして、それを境にジンオウガの動きが一変する。
ジンオウガは、高速で突進しまくるわ、ぐるんぐるん旋回攻撃するわ、嬉しさのあまりにひっくり返ってバク転キックするわで、さっきまでは何だったんだというぐらい元気いっぱいにエリアを走り回っている。とてもではないが奴の動きについていけず、早々に一度目の猫車に乗せられる。
私に勝ち目はあるのだろうか。
ジンオウガのはしゃぎっぷりを物語る技がもうひとつある。それは猫パンチ。
獲物に向かって前進しながら右、左、右と3回にゃん、にゃん、にゃん!と猫パンチを繰り出す。殴られている私は、さながら猫に弄ばれるネズミのよう。二度目の猫車に乗せられる。
二度の戦闘不能、強すぎる敵とくれば、次に出てくるのが愚痴である。
大はしゃぎでエリアを行き来するジンオウガを見て、私はふと思った。こいつはゲリョスだと。狂ったようにエリアを駆け回るあのゲリョスそのものだと。そして、私の中でジンオウガのあだ名はゲリョスもどきになった。
ゲリョスもどきは良く逃げる。逃げて逃げて逃げまくる。何度エリアを移動すれば気が済むんだというぐらい逃げる。あまりの逃げっぷりにつけたあだ名が逃げ王者。当初持っていたジンオウガの格好いいイメージなど微塵もない。
逃げ王者を追いかけまわし、ついに奴が巣穴で居眠りしている場面に遭遇した。いつものようにシビレ罠をセットしてから奴を蹴飛ばして起こす。
だが、奴はしびれなかった。
起きて早々、眠りを妨害した私に猫パンチを繰り出してくる。あやうく三度目の猫車に乗せられるところだったが、命からがら別のエリアへ逃避する。自分がこの様では、奴のことを逃げ王者などと馬鹿にできない。
回復薬がなくなった。すでに2回猫車に乗せられている私には、もう後がない。
追加の補給物資の中に大タル爆弾があったので、それを持ち出し、ジンオウガの反応がある巣穴へと向かう。
ジンオウガは、またも巣穴で居眠りをしていた。眠るジンオウガの傍らに大タル爆弾をセットし、少し離れた場所からペイント玉を投げつけて爆弾を爆破。ジンオウガの頭部破壊に成功し、サブターゲットの達成条件を満たす。
このまま逃げて報告しようかとも思ったが、奴のことをさんざん逃げ王者と馬鹿にしていた私がここで逃げるわけにはいかない。オトモアイルーの気まぐれな回復にわずかな望みを託し、奴との戦闘を続ける。
その後、奴が2回ほど逃げ出したところで、ようやく息の根を止めることができた。私の残り体力は15%程度。ほんとうにギリギリの勝利だ。ジンオウガ相手に初挑戦で初勝利とは出来すぎな気もするが、こちらも2回倒されているだけに痛み分けと言ったところか。
次こそは一度も倒されることなく完全勝利を収めたい。