ブラックレイク地区 地下闘技場『ザ・ガントレット』にて
「ようこそザ・ガウントレットへ。私は試合の進行係兼回復係のケリサイよ、よろしくね。」
酒場の地下に降りてきた俺に一人の女性が声を掛けてきた。
まずは彼女からザ・ガウントレットのルール説明を受ける。
ルールは至極簡単、やるかやられるかの一本勝負。試合前の呪文やポーションによる補強は無効で、闘技者のほかにパートナーとして仲間か動物を1人連れていてもいいとのこと。
ザ・ガウントレットで勝利者が得られるものは名誉のみ。賞金などはないらしい。ただし、この闘技場の支配者であり最強の闘士であるクローダスを倒せばこのボード・レイド・ベア亭を丸ごと貰えるのだという。なんとも太っ腹な話だ。
地下の中央には金網で四角く仕切られた場所があり、そこが闘技場となっている。それを囲むように数人の観客が今か今かと試合が始まるのを待ち続けていた。
逃げ場のない金網デスマッチ、これは燃えてくる。
参加申込みを済ませ、試合が始まるのを待つ。
そしていよいよ試合が始まった。
■第一回戦
相手は炎を纏ったハンドアックスを持つドワーフの戦士フルクス。相棒はアタック・ドッグ。
さすがドワーフの戦士だけあって力強く、そしてなによりタフだ。彼の武器に付随する炎ダメージもけっこう痛い。
苦戦を強いられたが最後はこちらが勝利。勝者の証として「ザ・ガウントレット:第一のメダル」を受け取った。
しかし、これほど強い奴が最初に出てくるとなると、この先が思いやられる。
■第二回戦
相手はハーフリングの格闘家ファシ。相棒はウルフ。
ハーフリングだけあって動きが素早く、こちらの攻撃はことごとく避けられてしまう。ただ、幸いにも相手は非力なため、攻撃が当たっても大して痛くはない。
戦闘時間は長引いたが問題なく勝ちを収め、「ザ・ガウントレット:第二のメダル」を受け取った。
■第三回戦
相手はハーフオークの戦士エイガー。相棒はクラッグ・キャット。
本当にこの闘技場のNo.2 かと疑いたくなるぐらい弱い。事前の情報では毒が塗られた武器を使うと聞いていたのだが、こちらが毒に侵されることは一度もなかった。
勝者の証として「ザ・ガウントレット:第三のメダル」を受け取った。
■最終戦
最終戦の相手はこの闘技場の支配者であるクローダス。相棒はパンサー 2匹。
クローダスの強さの秘密は”インチキ”にある。
彼だけはパートナーとしてパンサーを2匹連れているのだが、それは大した問題ではない。問題は審判のケリサイがクローダスと共謀していることで、試合中、回復魔法を掛けるなどして彼を援護するらしい。
事前にこの情報を得ていた俺はケリサイに対してクローダスに手を貸さないように説得を試みるも失敗。仕方がないので 400Gold出して逆に彼女を買収、公平に審判することを誓わせる。
これで憂いはなくなった。
いざ尋常に勝負!
クローダスの攻撃力は馬鹿に出来ないが体力は余りないようだ。
相手の攻撃をまともに受けないようにだけ注意しながら戦いを進めていく。
ケリサイはというと、俺との約束をしっかり守ってくれているようで、クローダスに手を貸すような素振りはみせない。逆にクローダスはいつまでたっても援護がこないことにイライラしているようだ。
やがて床に剣を突き刺し片ひざをつくクローダス。
この瞬間、俺はこのザ・ガウントレットの頂点に立ったのだ。
勝者の証として「ザ・ガウントレット:優勝メダル」、副賞としてボード・レイド・ベア亭を譲渡された。
それにしても、本当にこの酒場を貰えってしまっていいのだろうか。
敗者であるクローダス達が去った後、闘技場を後にして上の酒場に戻る。
バーテンダーやウェイトレスは既に俺のことを「支配人」と呼び、酒場の客も喝采の声を上げている。
ふふ、悪くないな。
ただ気に入らないのがバーテンダーの俺に対する評価。
《商人の反応は好意的ではない》
なんだ? 俺が店主じゃ不満か? (涙