ブラックレイク地区 メルダネン邸門前にて
いま俺は魔法使いで貴族のメルダネンの屋敷前にいる。
さきほどから屋敷に入れてくれと門番のオレアンと交渉しているのだが、奴は頑として通行を許可してくれないのでほとほと困り果てている状態だ。
どうせ屋敷の中で暴れることだし、こいつを殺して力ずくで通過してしまってもいいのだが、さてどうしてものか。
ひとまずこの場を離れて別の侵入方法を模索する。
そんなとき、貴族たちの屋敷で掃除をしているお掃除婆さんことミリー婆さんと出会った。
ミリー婆さんは若い頃からメルダネン邸の掃除を任されていたらしい。そこで彼女は若かりし日のメルダネンと出会い、二人は恋に落ちた。
そんな二人の仲を引き裂こうとする人物がいた。メルダネンの父親だ。
彼は自分の息子が下働きの女とつきあうことを良しとしなかった。そして二人は無理矢理引き離され、堂々と出会うことができなくなってしまった。
しかしメルダネンは諦めなかった。
メルダネンはミリーと逢引きするために魔法の力でポータルを開き、自分の部屋と彼女の部屋を結んだ。そして、そのポータルは現在も機能しているらしい。
これを使わない手はない。
ミリー婆さんから自宅の鍵を借りて彼女の家へと向かう。
果たしてポータルは確かに存在した。
しかし、メルダネンの部屋と結ばれているということは、ポータルから出た途端メルダネンと鉢合わせなんてことも在り得る。
う〜ん、まあ、その時はその時だ。なんとかするさ。
意を決し、ポータルの中へと足を踏み入れる。
ポータルの先はベッドが置いてある小部屋だった。メルダネンの寝室だろうか。
幸い部屋の中に人の姿は見当たらない。
現在地が屋敷のどの辺りかはわからないが、潜入には成功したんだし、これで良しとするか。