ブラックレイク地区 メルダネン邸地下書斎にて
・・・(チラ)
・・・(チラ)
おかしい・・・奴は地下室にいるじゃなかったのか?
いま俺はメルダネン邸の地下にある彼の実験室とおぼしき部屋の前にいる。
部屋の床には魔方陣が描かれており、室内に備えつけられた檻の中には一人の女性(おそらくはドライアド)が捕らえられているのがうかがえる。しかし、室内に肝心のメルダネンの姿はなく、気配すら感じられない。ドライアドの傍を片時も離れなれず付っきりの状態だとばかり思っていたのに・・・。
いちおう警戒しながら室内に入るが、やはりメルダネンの姿は見受けられない。
魔法使いだけあってドライアドに姿を変えてこちらを罠にはめようとしている可能性も考えられるが、どうせ俺にはそれを見破る能力などない。
まあ、その時はその時、なるようにしかならん。
罠に注意しながらドライアドが囚われている檻へ向かう。
檻越しにドライアドに話しかける。
彼女から返ってきたのは救いを求める声でも感謝の声でもなかった。
それは危機を知らせる警告。
「気をつけて、メルダネンはこの部屋にいるわ!」
次の瞬間、背後に気配が生じた。
慌てて後ろを振り向く。
「 - Cone of Cold - 」
魔法使いから扇状に放射された冷気が俺とシャルウィンを襲う。そのあまりの威力にあえなく絶命するシャルウィン。
ちっ、ぬかった。
再び呪文詠唱を開始したメルダネンに接近し攻撃を試みる。
しかし俺が一撃入れるよりも早く奴の呪文が発動。
「 - Invisibility - 」
そして姿を消すメルダネン。
かすかな気配を察知して剣を振るがなかなか奴を捉えることができない。これは厄介だ。
しかし、メルダネンといえど呪文が発動する瞬間だけは姿を現す。その一瞬を逃さずに攻撃を仕掛け、メルダネンにダメージを与えていく。
そして遂にメルダネンは観念し、降参した。
とりあえずメルダネンから話しを聞く。
彼は俺のことをフォルモーザからの刺客だと思っていたようだ。
あながち間違ってはいないのだが、ここで命乞いをするメルダネンに一つの提案を出してみた。
「フォルモーザより金を出せば逆に彼女を消してやる」と。
どちらかといえば俺はあのフォルモーザという胡散臭いエルフが嫌いだ。元より金目当ての仕事だっただけに、メルダネンがそれ以上出すというならそれはそれで構わない。
案の定この提案にメルダネンは飛びついてきた。
彼から提示された報酬は前金で500Gold、成功したらさらに500Goldと悪くはない。
交渉は成立。暗殺のターゲットはメルダネンからフォルモーザへと変わった。
交渉を終えると、メルダネンは一時的に身を隠すためどこかへ転移していった。
メルダネンから受け取った鍵を使いドライアドを檻から出してあげる。
あのアカデミー襲撃事件以来、森から離れていたドライアドはかなり弱っていた。
アリベスの直接の力にはなれないが、これを持っていってくださいと、彼女から治療薬の材料となるドライアドの髪を一房受け取る。
森へと帰っていくドライアドを見送った後、俺も帰還の石を使ってティール神殿に帰還。
アリベスにドライアドの髪を届けて報酬とねぎらいの言葉を賜る。
これで治療薬の材料は残りひとつ。あと一息だ。