治療薬創造の儀式
俺はいまレディ・アリベスに招かれ、ネヴァーウィンター城内のとある広間にいる。これからこの場所で行われる治療薬創造の儀式に立ち会うためだ。
儀式の間には数人の神官の他にレディ・アリベスを始め、フェンシック・モス、デスター・インデレイン、そしてこの街を統べるロード・ナッシャー・アラゴンダーとそうそうたる顔ぶれが揃っていた。
儀式が始まるまでの間、出席者の面々と会話をしていく。さすがのデスターも今日ばかりは嫌味ではなく労いの言葉をかけてくれた。
そして、いよいよ儀式が執り行われる時が来た。
広間の中央に置かれた台座に、これまで俺が集めてきた治療薬の材料となる4つのアイテムが並べられる。そして台座を囲むようにアリベス、フェンシック、デスターの三人が立ち並び、両手を天にかざして祝福を求める祈りを詠唱する。
やがて天空から台座に向けまばゆい光が当てられたかと思うと、儀式を行っていた3人から歓喜の声が上がった。
ようやくこの街に住む全ての人々が待ち望んだ死悶の疫の治療薬が完成したのだ。
「やった、やったぞ!治療薬が完成したぞ!」
「あぁ、そうともフェンシック。”私の”治療薬が完成したのだ!」
デスターが言葉を発した瞬間、その場の空気が一変する。
「・・・デスター、何を言っているんだ?」
「ふはははははは、こういうことだ!」
次の瞬間、広間の隅に数人のヘルム教徒が姿を現し、攻撃を仕掛けてきた。
デスターの野郎、やっぱり裏切りやがったな!
ある程度予想はしていたが、治療薬を完成させたこのタイミングを狙うとは、なんとも姑息な野郎だ。
すかさず剣を抜き、デスターを斬りつけるが・・・効かない!?
デスターはなにか特殊な力、いうなれば無敵フラグで護られているようだ。
なんて卑怯な・・・。
しかたなく襲撃してきたヘルム教徒達を始末していく。
デスターはといえば、治療薬を奪い取ると、いつの間にか儀式の間に出現したポータルを抜けて逃走していた。
その後を追ってフェンシックもポータルを抜けていったようだが、いま考えればあいつもデスターとグルだったのかもしれない。
それにしてもここまで周到に準備をしてあったとは・・・。
このままデスターを逃がすつもりはない。せめて治療薬だけでも奪還しなくては・・・。
幸いデスター達が脱出に使ったポータルはレディ・アリベスが開いたままの状態にしてくれていた。
これならデスターが逃げた場所にいけるはずだ。
アリベスから治療薬の奪還とデスター、フェンシック両名の捕縛の命を受けた俺は、シャルウィンと共にポータルを潜り抜ける。
ポータルを抜けた先はデスター達ヘルム教徒の総本山であるヘルムズ・ホールドへと続く道だった。