消えた絵画 (Canvas the Castle)
■事件の概要
コロール城ではちょっとした事件が発生しており、そのために城内は騒然としていた。
その事件とは、コロール伯Arriana Valgaの寝室から1枚の絵画が何者かに盗み出されたというもので、彼女は盗まれた絵画の奪還とその犯人探しにやっきになっていた。盗まれた絵画は前コロール伯で彼女の亡くした旦那でもあるValga伯爵がとても大切にしていたものらしい。
事件があった日の夜も当然寝室の扉は施錠されており、また、城の外から何者かが侵入した形跡もない。そこで彼女は内部犯による犯行ではないかと考え始めた。
疑わしき者として彼女が名前を挙げたのは次の五名。
宮廷魔術師のChanel、ポーターのOrgnolf、守衛隊長のBittneld、執事のOrok gro-Ghost、広報官のLaythe Wavrick。皆、彼女の側近で、彼女の寝室に入ることを許されている者たちである。
■事件の聞き込み調査
とまあここまでが、コロール城を訪ね、Arriana Valgaに謁見した際に彼女から依頼された仕事の内容だ。
まずは彼女が名前を挙げた5人に会って話を聞くところから調査を開始した。
- 広報官 Laythe Wavrick談
- ここだけの話なんだけどさー、最近 Orgnolfの様子が少しおかしいんだ。前よりもいっそう酒癖がわるくなったっていうかさ。
そうそう、あいつ酒を買う金がなくて借金までしてるっていうぜ。ったく、てめえの給料考えろっての。
- 守衛隊長 Bittneld the Curse-Bringer談
- 事件があった夜は市中の見回りをしていました。ええ、特に変わった様子はありませんでした。
そういえば気になる事がひとつだけ。最近、変な時間にChanelを見かけることが多いのです。また、彼女は城の西塔に篭ることが多くなった気がします。
いつでしたか、それとなしに彼女に尋ねてみたんです。すると彼女は複雑な魔術の研究をしているといっていました。
なるほどと思って、それ以上深くは追及しませんでしたが。
- ポーター Orgnolf Hairy-Legs談
- あの盗難事件があった夜かい? あの夜はBravilからの荷物を届けにきた配達屋のガキと大広間で口論してたぜ。あの使えないガキときたら、大雨の中をくるもんだからぬかるみで荷馬をすっころばせちまいやがって、積荷のワインを全部おしゃかにしちまいやがった。で、大広間で、雨のせいだ俺は悪くない、いいやお前が悪い、の言い争いよ。まあ最後は、てめえは首だーって言っておっぱらってやったけどな。
その後かい?その後は部屋にもどって朝まで寝たよ。
- 宮廷魔術師 Chanel談
- 絵画が盗まれたのは知っている。でも、その調査のために外の人間を雇ったのは知らなかったわ。
あの夜は城の中庭で星を詠んでいたの。その後キッチンに行って、ワインを飲みながら星座早見表を見ていたのよ。
えっ、ひとりでかって? そっ、そうよ、何か文句ある?
その後? その後は自分の部屋に戻って寝たわ。
えっ、ひとりでかって? 当たり前じゃない、変なこと聞かないでよ、もぅ。
- 執事 Orok gro-Ghoth談
- あの夜 ChanelかOrgnolf 見なかった。
俺 自分の部屋にいた。 何故? 雨降ってたから。
でも ChanelとOrgnolf 大丈夫。 でも Orgnolf ちょと喧嘩した。
俺昔 Orgnolf 捕まえた 西塔で。 Orgnolf 酒飲んでた それいくない。
俺 伯爵に言ういった Orgnolf 文句いった でも納得した。
Orgnolf もうしない。
LaytheとBittneldを除く3人は金を渡して信頼を買う必要があったが、その甲斐もあってなんとか全員から証言を得ることができた。
次はこの証言の裏付け調査を、と思ったが、どうやらその必要はない(というか会話選択肢がない)ようだ。
■事件の証拠品探し
次は物的証拠探しを開始した。
まずはChanelが魔術の研究をし、Orgnolfが酒を飲んでいたという城の西塔へ向かう。
西塔内はまるで物置き部屋のようにいくつもの木箱が積み重ねられていたが、その木箱の陰に隠れていた落とし戸を見つけた。
落とし戸を開き、はしごを伝って下の階へ下りると、そこにはイーゼルに立てかけられた1枚のキャンバス。キャンバスには夜のコロール城が描かれている。これが伯爵夫人の寝室から盗まれたという絵画だろうか。
それを確認する為にもこの絵画を持って伯爵夫人のもとへ行きたいところなのだが、なぜかキャンバスが持ち上らないので諦めることにした。
城内の部屋をしらみつぶしに調べていると、Chanelの部屋の机から画材道具がみつかった。どうやら彼女には絵を描く趣味があるようだ。
食堂内を歩き回っていると、床に敷かれたカーペットの上に広がる白い染みに気がついた。最初は誰かが料理かワインをこぼしただけと思ったが、それだけで柄もののカーペットがこう白くなるものだろうか。
染みの部分を指で触ってみると何かが指先にこびりついた。この感触、この臭い。・・・これはひょっとして絵の具?
■事件の犯人は
Chanelが篭っているという城の西塔から見つかった1枚の絵画。
Chanelの部屋から見つかった画材道具。
Chanelが事件当夜いたという食堂のカーペットで見つけた絵の具の染み。
趣味で絵を描き、絵が邪魔になったから西塔に置き、たまたま食堂のカーペットの上に絵の具をこぼしただけだとしても、犯人はChanelなのだ。何故かって?それは何となく聞いてみたら当のChanelが犯行を認めてしまったから。
Chanelは故Valga伯爵を愛していた。そして、その想いをキャンバスに込めて1枚の絵を描き、彼にプレゼントした。それが今回、伯爵夫人の寝室から盗まれた絵画。
Chanelは彼のために描いた絵が伯爵夫人のもとにあることにどうしても我慢できず、絵を盗むという行為に及んでしまったと自白してくれた。
■後日談
Chanelの自白を聞いた後、Arriana Valgaのもとへ事件の報告にいく。
「城の関係者で犯人と思しき人物はいませんでした」と。
なぜ嘘をついてまで彼女を庇ったのかは自分でもわからない。もしかしたら『嘘をつく』という選択肢があって、そっちを選んだほうが面白そうだからというただの気まぐれだったのかもしれない。
とにかくこの事件は犯人も盗まれた絵画も発見できないまま迷宮入りした。
その後、Chanelは自ら宮廷魔術師の職を辞し、コロール城から出て行った。
「なにかお礼がしたいの、3週間だけ待ってちょうだい。あなたのために特別な絵を描くわ。」と彼女は言っていたが、いったいなんの絵を描いてくれるのだろうか。いまから楽しみである。